白湯のブログ

若手(だと信じている)臨床検査技師が思ったこと・勉強したことをつらつら書くブログです。

故郷に帰ろう、ああ懐かしきフィラデルフィア

 

フィラデルフィア(Ph)染色体をご存知でしょうか。

 

Ph染色体は9番染色体と22番染色体の相互転座

t(9 ; 22)(q34 ; q11)

により生じた変異22番染色体のことです。

 

この染色体転座により22番染色体上にBCR-ABL1融合遺伝子が生じます。このキメラ遺伝子が恒常的な活性型チロシンキナーゼとして作用し、細胞を過剰に増殖させます。

慢性骨髄性白血病CML)の原因遺伝子として有名ですね。

学生さんは

く(9)に(2)に(2)帰ろう、フィラデルフィア

と覚えましょう。笑

 

このPh染色体が発見されたのは1960年だそうで、

発見者はペンシルベニア大学医学大学院のP. Nowellとフォックス・チェイス・がんセンターのD. Hungerfordです。

この両名の所属施設がどちらもアメリカのペンシルベニア州フィラデルフィアにあることから「フィラデルフィア染色体」と名付けられたそうです。*1

 

CMLでは造血幹細胞レベルでPh染色体が生じますが、細胞の分化能は保たれているため全ての分化段階の血球(主に顆粒球系)が増加します。

これを「白血病裂孔がない」と表現します。

 

しかしPh染色体陽性でも白血病裂孔がある≒芽球の増加が見られる疾患があります。主に次の3つです。

今回はこれらの鑑別について書いてみます。

 

 

まずは簡単なMPALから。

MPALは2系統以上の分化傾向を示す急性白血病であり、急性白血病の2~5%を占める稀な疾患です。

2系統の芽球が混在する場合 (bilineage leukemia) と芽球が2系統の表面形質を併せ持つ場合 (biphenotypic leukemia) の両者を合わせてMPALに分類されます。

このMPALで最も多くみられる遺伝子異常がPh染色体です。

 

なぜこれの鑑別が簡単か、と言いますと

診断には表面マーカーが重要だから

なんですね。

 

WHO分類には骨髄系・B細胞系・T細胞系それぞれの細胞系統同定のための条件が記載されています。

この条件はほぼ表面マーカーです(詳細はこの場では割愛します)。

これら3系統のうち2つ以上に合致すればMPALとなります。

 

検査結果が届く順番としては

  1. 形態学的検査
  2. 細胞表面マーカー検査
  3. キメラ遺伝子検査
  4. 染色体検査

となりますので、4でPh染色体の有無が分かる前(2の時点)に診断のアタリがついちゃいます。

そのため、他の疾患との鑑別は容易であると思われます。

 

 

次にCML急性転化とPh陽性de novo白血病の鑑別について。

 

まずCML慢性期の既往があった人で芽球が増えてしまったのなら、CMLの急性転化と考えて良いでしょう。

 

白血球数増多の既往がない or 検査データがない場合は困りましたね。

上述の1~4の検査だけでは鑑別が不可能です。

 

ここで登場するのが

【末梢血好中球FISH】

です。

 

これはFISH法でBCR-ABL1を検出するのですが、大きな特徴として

単核球と分葉核球に分けて陽性率を算出する

点が挙げられます。

 

CMLは造血幹細胞にPh染色体が生じているため、全ての白血球でBCR-ABL1が陽性になります。

慢性期ではPh陽性血球の分化能が保たれていますが、ある分化段階に二次的変異が入って分化能を失い、その細胞(≒芽球)が異常増殖することで急性転化となります。

 

そのため、CML急性転化では

単核球(≒芽球)と分葉核球(≒成熟好中球)のいずれもBCR-ABL1が陽性になります。

 

一方、de novo白血病の場合は背景にCMLがありませんから、Ph染色体が見られるのは芽球だけです。

したがって単核球のみBCR-ABL1陽性となり、CML急性転化との鑑別が可能になります。

 

CML急性転化とde novo白血病の鑑別は、特にリンパ芽球が増えていた場合に重要になります。

Ph陽性ALLは頻度が高いので要注意です。

ただしCML急性転化は骨髄系の方が多いみたいですけどね(骨髄系が約70%)。

 

ちなみにPh陽性de novo AMLというのもごく稀にあるようです。

WHO分類2016から暫定病型として新たに記載されました。

 

治療方針は、CML急性転化でもde novo白血病でも通常の白血病としての化学療法にチロシンキナーゼ阻害剤を併用する形になると思われます。

前者の場合は移植が選択肢の上位に入ってきますかね。急性転化しちゃうと予後不良なので…。

 

 

 

最後にポイントをまとめます。

 

 

CML急性転化とde novo白血病の鑑別

→末梢血好中球FISHが有用!

 

CML急性転化…単核球:陽性、分葉核球:陽性

de novo白血病…単核球:陽性、分葉核球:陰性

 

 

以上、つらつらと備忘録を兼ねて書きました。

ご参考になれば幸いです。

 

*1:参照したのはWikipediaですが一応原典を貼っておきます。→ Nowell P, Hungerford D. "A minute chromosome in chronic granulocytic leukemia." Science 1960;132:1497. ただし検索したけど出て来なかった…。

*2:de novoラテン語で「初めから」「新たに」などを意味する言葉。この場合は「CML慢性期の既往なく新たに発症した」と考えれば良いでしょうか。

社会人大学院制度について。

 

こんにちは、白湯です。

 

前回の記事では、大学を卒業してそのまま大学院に進学する場合について書いてみました。

 

saaaah-yu.hatenablog.com

 

今回は臨床検査技師として就職してから大学院を目指す、いわゆる社会人大学院制度について書いてみました。

また長くなっちゃいました……。笑

ただ私は社会人大学院の経験者ではないので、一般論的な話であることはご了承ください。

 

 

まず前提として、

仕事を辞めてから大学院に行くか?働きながら行くか?

が問題になるかと思います。

 

これは大学院に行く理由によるでしょう。

「大学院で取得した学位を活かして転職しよう」

と考えているなら、仕事を辞めて大学院に専念するのもアリだと思います。

 

もし、

「出来れば学位取得後も今の職場で働き続けたいけど、仕事と両立が出来なそうだから……」

という理由で退職しようと考えているなら、それはもったいない気がします。

施設によっては学位取得のための休職制度があるかもしれませんし、働きながらの学位取得を支援する制度もある(後述します)ので、それらを活用するのがいいと思います。

 

 

では、以下の項目に分けて説明します。

  • 大学院の教育課程
  • 大学院に入るためには
  • 仕事と大学院の両立
  • 論文博士」について

しばしお付き合いください。

 

 

 

【大学院の教育課程】

大学院というものに馴染みのない方もいると思いますので、まずは大学院の教育課程について説明します。

 

大学院には修士課程(博士前期課程)博士課程(博士前期課程)があります。

臨床検査技師と関わりが大きいのは医療技術系の大学院でしょうが、その場合はカッコ内の表記が多いかもしれません(本記事では分かりやすさのために修士課程・博士課程として説明します)。

 

修士課程は学士(大学卒業)を取得した者が、博士課程は修士を取得した者が入学するのが一般的です。但しそれらの過程を経なくても入学可能な場合があります(後述します)。

 

修士課程は2年、博士課程は3年が標準修業年数となっています。主に医師を対象とした医学系大学院の博士課程は4年になります。

 

 

【大学院に入るためには】

まずは入りたい研究室にアポイントを取りましょう。

大学院入試の際には受け入れ先の教授の了承が必須です。連絡もなしに「ここで研究したいです!」なんて言われても「誰やこいつ」で一蹴されちゃいます。

ついでに入試についてや入学してからのあれこれを相談しておくと良いでしょう。先のことがスムーズに進められると思います。

 

 

大学院の教育課程の説明で

「短大や専門学校卒だと大学院に入れないの?」

と思った方へ。

そうではありません

 

大学や修士課程を卒業(修了)していなくても、それと同等以上の学力を有すると認められれば受験が可能です。社会人としての経験を考慮してもらえます。

そのためには、願書を提出する前に「入学資格審査」を受ける必要があります。詳細は受験したい大学院の募集要項を参照してください。

 

余談ですが、この制度を利用(?)すると医師でなくても医学博士が取得できます。

医学系大学院の博士課程を修了し、学位が認められれば晴れて医学博士です。やったね!

世の中には医学博士の肩書きでトンデモなことを言う輩がいますが、医学博士=医師とは限らないのでご注意を。

医師免許持っててもトンデモな主張をする人もいますけどね。

 

 

願書を提出して受理されたらいざ入試です。

試験内容は大学院によるでしょうが、

  • 専門試験
  • 英語試験
  • 面接

といったところですかね。

過去問を公開しているところもあったり、英語試験の代わりにTOEICなどの外部機関のスコアを提出させるところもあるみたいです。

また、社会人としての経験を活かして試験科目が免除される場合もあるようです。

 

受験後は合格するか心配になると思います。

ですが、受け入れ先の教授の了承を得ていて、なおかつ受験人数が研究室のキャパ内に収まっているなら試験の成績が悪くてもほぼ大丈夫だと思います。笑

 

【仕事と大学院の両立】

働きながら大学院に通うとなると、研究に専念する時間がどうしても少なくなります。そのため、標準修業年数で学位を取得するのが難しい場合が多いと思います。

 

そんなときは「長期履修制度」を活用しましょう。これは標準修業年限の2倍の年数で履修できる制度になります。

基本的には願書提出の際に申請するみたいですが、途中から申請することも可能なようです。

 

この制度のポイントは履修期間が延びても支払う学費の総額は変わらないということです。

研究の進捗が順調で標準年数で修了できそうになったら短縮を申請することも可能です(その場合でも支払う学費の総額は変わらないようですが)。

また、優秀な業績を上げれば標準年数に満たない期間で修了することも可能です(これも申請が必要)。

仕事と両立しながらではなかなか難しいとは思いますけどね……参考までに。

 

 

次に実際の学生生活について。

 

座学は17時以降に開講される講義が多く、社会人学生が出席しやすい配慮がされていると思います。Web講義やe-learningを活用しているところもあるようです。

 

肝心の研究についてですが、これは研究テーマによって負担の大きさが違ってくるでしょうね。

 

患者さんの検査結果や臨床検体を利用するなど、仕事をしながらデータを集められる内容だと負担が少ないと思います。

 

逆に実験動物や細胞を扱ったり、がっつりラボで実験をしないといけない内容だと大変そうです。

終業後にラボに来て細胞のメンテや実験をして…となるとけっこうな負担になると思います。

ラボの人にお手伝いを頼んだり、休日にまとめて出来るような計画を立てる必要があるでしょう。

 

研究を進めるにあたっては、指導教官への進捗報告や相談が必須になってきます。

もし大学病院勤務で所属の大学院に行っているなら、仕事の空き時間に指導してもらえたりできそうですね。

そうでないなら終業後や休日、あるいはメールなどで指導をお願いする形になると思います。

 

 

【「論文博士」について】

論文博士」というものを聞いたことはあるでしょうか。

 

これは、大学院の博士(後期)課程に所属せず、論文の提出によって博士と同等以上の学力を有すると認められた者に博士の学位を授与する制度です。

職場で既にがっつり研究しているならこの制度を活用できるかもしれません。

 

この「論文博士」という制度は日本独自のものらしいですね。

文部科学省の大学院教育についての答申には、

我が国の学位の国際的な通用性,信頼性を確保していくことが極めて重要となってきていることなどを考慮すると,諸外国の学位制度と比較して我が国独特の論文博士については,将来的には廃止する方向で検討すべきではないかという意見も出されている。

との記載がありました。

 

需要はまだあるようなのですぐに廃止されることはないでしょうが、今後は大学院に所属して学位取得を目指す形が一般的になるのでは、と思われます。

 

 

 

以上、つらつらと社会人大学院について書いてみました。

就職してから大学院を目指す理由は人それぞれでしょうが、いずれにしろ家族と職場の理解を得ることが大事だと思います。

お金と時間と労力を消費しますし、学生と違って色々なしがらみがありますからね……。

 

上述のように大学院の門戸は社会人に対しても開かれています。

自身のスキルアップのため・生涯学習の一環として、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

臨床検査技師は大学院に行くべきか?

こんにちは、白湯です。

 

近年になって検査技師養成校は四年制大学が多くなりましたよね。

それに伴い、国立大学以外でも大学院を併設しているところが増えてきました。

 

大学院を併設している大学に所属しているなら、一度は候補に挙がるだろう

「大学院進学」 という選択肢。

進学と就職、どっちがいいのかな?と悩んでいる学生さんもいるでしょう。

 

 

また先に結論を言ってしまいます。

 

"普通に"臨床検査技師として働くなら大学院の学位は不要です。

 

では、大学院に行く【メリット】と【デメリット】に分けて私見を交えながら書いていこうと思います。

 

※注

今回の記事では学部からそのまま大学院に進学することを想定しています。社会人大学院制度については次の記事で書く予定です。

 

 

【大学院に行くメリット】

  • 検査技師として働く際に有用なスキルが得られる場合がある。

大学によっては大学院で細胞検査士コースがあるところもあります。

また研究室によっては臨床に近いことを研究テーマにしていて、そこで取り組んだことがすぐに仕事に活かせる場合があります。

私の知り合いで研究データを集める名目でエコーをしていた人がいて、その人は病院に就職して即戦力としてエコーをしています。

あとアルバイトとして検査技師の仕事をすることも出来ますね。

 

  • 臨床研究の手法を学べる

一応書いてみましたけどどうなんですかね?

ゴリゴリの基礎系ラボだったので正直よく分かりません。笑

大学院に行ってないけど学会発表や論文投稿をばんばんやってる技師さんもいますし、大学院じゃないと学べない、というわけではないと思います。

 

  • 就職に院卒の学位が必要な場合がある

一部の大学病院などには新卒はほぼ院卒しか採用しない、という施設もあるようです。

 

  • 出世に有利になる場合がある

大学病院だと技師長になるのに博士号が必要なところがあるみたいです。

出世に興味ないなら関係ないですね。

 

  • 検査技師以外の職種に就きやすい

前回の記事でも書きましたが、学部卒で企業就活をするのは至難の技です。

企業の新卒採用って大量にエントリーしてそのうち一つから内定を貰えれば御の字、って感じですので、実習や試験、卒業研究に追われる学部3、4年でそれをこなすのは大変だと思います。 

 

一方、大学院はスケジュールの自由度が大きいです。講義は週に1~2コマ、それ以外は研究です。

研究のスケジュールもある程度は学生の裁量に委ねられていて、やることちゃんとやっていれば就活で頻繁にいなくなっても許されていました (もちろんラボの雰囲気によるでしょうが……)。

 

また大学院に行くメリットはスケジュール面以外にもあって、

"理系院卒"という肩書があるだけでエントリーできる職種が広がる

んですよね。

製薬会社を例にすれば、

学部卒だと MR にしかエントリーできませんが、

理系院卒になるとMR以外の職種 (研究、開発、学術、etc.) にもエントリーが可能になります。

(ただエントリーが出来るってだけで、内定がもらえるかは個人の努力次第です)

 

  • 研究者としての道が開ける

修士→博士課程と進んで無事に博士号を取得できれば一人前の研究者の仲間入りです。

ラボにポストがあれば残るも良し、他大学や企業の研究職に就くも良し、一生をかけて研究に邁進しましょう☆

(一部の天才を除いては茨の道でしょうが……私は詳しくないのでこれ以上の発言は控えます)

 

  • 社会に出る時期を遅くできる

社会人になりたくないな〜〜まだ学生でいたい〜〜〜って人は合法的(?)にモラトリアムを延長できます。やったぜ!(?)

 

  • 「あのとき大学院に行っておけばよかった…」という後悔をしなくて済む

大学院がある大学だと教授陣がめっちゃ進学を推してくるじゃないですか。その言葉を聞いてると「大学院も良いかもな…」って思っちゃいますよね。

大学院に魅力を感じつつも断念した人は、そのもやもやを抱えながら仕事していくことになるのかもしれません。やった後悔よりやらなかった後悔の方が強い、って言いますしね。

そんな人のために社会人入学制度があります。これについては次の記事で書きます。

 

ちなみに教授陣が進学を推すのって自分のラボで研究を進めてくれる人手が欲しいから、ってのが大きいと思うんですよね。上手いこと成果が出ればラボの業績になりますから。所詮そんなもんです。

 

次に

【大学院にいくデメリット】

  • 学費が追加で必要になる

これはやむを得ないですね。奨学金や学費減免制度もありますが、少なからぬ出費は免れないでしょう。

 

  • 検査技師として就職しづらくなる可能性がある

社会人経験がない博士となると、専門性が高すぎて施設によっては敬遠されるかもしれません。修士なら影響は少ないと思いますが、院卒に馴染みのない施設だと「何でうちに?」と不審に思われるかもしれません。

 

  • 安定した収入を得られるのが遅くなる

学生のアルバイト収入と社会人の収入ってやはり全然違うんですよね。大学院にいる期間はそれがないと考えると痛いです。

施設によっては、初任給は国家資格を取った学校の種類で決めるなんてところもあります。大学院で頑張ったのに初任給は大卒と同じ、なんてやってられないですよね…。

 

  • 社会に出るのが周りと比べて遅くなる

検査技師として働きたいと思っているなら、学部卒の同期が職場で経験を積んでいっていることに焦りを覚えます。

臨床系ならまだしもゴリゴリの基礎系ラボだとね、

こんなことやったって検査技師の仕事には全然活かせないよ……わたし何やってるんだろう……

と、一時期病みました。笑

 

あと結婚や出産などを考えると頭が痛いですね。

「就職してすぐ結婚は嫌だから3年目くらいかな〜最初は二人の時間を大切にしたいし、子どもが出来る前に認定資格も取っておきたいな〜」

なんて言ってるとあっという間に30代になります。

20代のうちの2年間ってめちゃめちゃ大事だよな、って身にしみて思います……。

 

 

まとめます。

 

【大学院の学費】+【学部卒で就職していれば得られたであろう収入と経験】

上回るだけのメリットを見いだせるなら進学すれば良いでしょう。

逆にそれを見いだせないなら進学はオススメしません。

周りが進学するから、教授に勧められたから、で何となく進学するのは絶対に止めたほうが良いです。

 

 

また長くなってしまいました……笑

ご意見ご感想お待ちしております。

 

 

追記:

2020年時点での私の印象は上記の通りです。

しかし近年は医療職の高学歴化が進んでいますし、10年後には院卒の割合がもっと増えているかもしれませんね。

 

 

臨床検査技師の養成校、どこを選ぶか問題。

こんにちは、白湯です。

 

臨床検査技師になるためには臨床検査技師の養成校に入る必要がありますが、

「どの養成校を選ぶか?」

というのがとても悩ましいところですよね。

旧帝大から専門学校まで、臨床検査技師の養成校はよりどりみどりです。

 

日本臨床検査学教育協議会によると、養成校は全国に87校あるみたいです(19.6.12現在)。けっこう多いのね……。

 

選択肢としては

国公立大学 or 私立大学 or 短大・専門学校

といった形になるでしょうか。

 

 

 

結論から言います。

 

国家試験に合格して就職できればどこでも大して変わりません。

 

以下で詳しく述べていきます。

【金銭面】【カリキュラム】【就職支援】【国家試験対策】【卒後の進路】

に分けてお伝えします。

 

 

※注

筆者は国公立大学出身であり、国公立大学に関しては筆者の実体験に基づくバイアスがかかっている可能性があります。また国公立大学以外に関しては筆者の伝聞と推測に基づく記述であることはご了承ください。

 

 

【金銭面】

ざっくり書くと

国公立大学<短大・専門<私立大学

になりますかね。

※公立の専門学校もあるみたいですが少数派みたいです。

 

学費はもちろんですが、短大・専門や私大だと

再試験を受けるごとに追加料金を徴収される

との話を聞きます。

国公立大学では私の知る限り聞いたことがありません。

 

もちろん再試験にならなければ追加料金はかからないし、私大でも奨学金や特待生制度など学費の減免制度が使えるところがあるでしょう。個人の努力次第です。

 

あと短大・専門は1年早く卒業できるので、

大卒より早く収入を得られるようになる

というのはメリットですよね。

その代わりにカリキュラムの密度がすごいんでしょうけど……。

 

【カリキュラム】

個人的な印象ですが、私大や短大・専門は講師陣に現場を知る臨床検査技師が多く、より臨床に則した内容である気がします。

検査血液学会の学会誌に養成校紹介コーナーがあるのですが、紹介されている私大や専門学校は講師も設備も充実していて羨ましく思います。

 

一方の国公立大学ですが、講師陣は技師以外が多い印象です。しかも研究畑にどっぷり浸かってる人ばかりなので、臨床のことはあまり知らないんですよね。特に国立で顕著です。

学内実習では化石みたいな実験器具を使わされて、病院実習になってあまりの違いに衝撃を受けました。

 

【就職支援】

これは

私立大学&短大・専門>国公立大学

でしょうね。

 

前者は入学希望者へのアピールとして就職率を挙げているところが多いですから、実績を作るために手厚く支援するでしょう。

もしかしたら自分が希望しない施設への就職を斡旋されたりするかもしれませんが……詳しくは知りません。

 

後者、国公立大学は良くも悪くも学生の自主性に委ねられている印象です。支援はしてくれるんでしょうけど、どこまで目をかけてくれるかは大学によります。

偏差値が高いからって教授陣が学生のポテンシャルを過信してる節があるんですよね……。

 

【国家試験対策】

これも

私立大学&短大・専門>国公立大学

でしょう。

 

前者は国試合格率も売りにしてますから手厚く指導するでしょう。その代わり国試に受かる見込みがないと判断されたら容赦なく留年させられるみたいです。恐ろしや……。

 

後者は進級判定は比較的ゆるいですね。出席日数さえ足りてれば再試、再々試などを経て何だかんだ進級させてくれます。代わりに国試対策は学生の自主性に委ねられている部分が大きいです。

偏差値が高いからって(以下略)

 

【卒後の進路】

卒後に検査技師として就職する以外の進路を目指す場合ですが、これは個人のやる気と努力に依存しますね。

 

大学であれば大学院に進学する選択肢がありますが、専門の人だって大学編入から大学院に入ることは可能です。

 

検査技師以外の職種を目指す場合、いわゆる大企業を志望するなら残念ながら大学名の影響は避けられないでしょう。

中小企業であれば影響は減ると思います。

 

 

ただし、これは個人的な意見なんですが、

 

大学や専門の最終学年で企業就活するのめちゃめちゃ大変だと思うよ……??

 

企業就活って、エントリーシート書いてWebテストしてグループディスカッションした上で面接が複数回あったりするわけじゃん?企業によっては選考解禁前にインターンがあったりするし。

学校のカリキュラムにもよるけど、講義や実習の合間を縫ってこれをこなすのは大変だと思うわ……。

検査の大卒で大手製薬会社のMRになった人を1人知ってますが、マジでバケモンだと思いました。

すごく頑張れば企業就職も可能みたいです(小声)

 

ちなみに大学院だとカリキュラムの自由度が上がるので、院卒で企業就職を狙うというのもアリですね。もちろん検査技師として働いてから企業に転職する道もあります。

 

 

……ちょっと国公立大学をdisりすぎた気がするので、母校の名誉のために国公立大学の良い点を挙げてみますね。

 

国公立大学の良い点】

  • 学費が安い

これはもう書きましたね。

 

  • 見聞を広げられる

国公立大学は医療系学部以外の学部が併設されてるところが多いため、一般教養科目が充実しています。

多感な学生時代に多方面の知識に触れられるのは貴重な体験だと思います。その後の人生を豊かにするための一助になるのではないかしら。

その道の専門家が語る歴史学社会学はなかなか面白かったですよ。

 

  • 最先端の研究に触れられる

これは大学によるでしょうが、私の母校は研究に力を入れていたので最先端の医学研究の世界を覗き見ることが出来ました。

卒業研究で研究室に配属され、そこでiPS細胞が普通に使われていることを知って「世紀の大発見と言われたiPS細胞が研究の世界ではもう常識なんだ!」と衝撃を受けたことを思い出します(2015年の話です)。

実験や文献検索をする中で「ニュースで取り上げられるような研究成果ってこういう営みの中で生まれるんだなぁ……」と思ったりしました。自分の中の世界が広がった体験でしたね。

 

 

と、ぐだぐだ書いてきましたけど、

現場で働く検査技師からすると

 

国家試験に合格して就職してきたのなら養成校がどこであろうと関係ない

 

というのが本音です。

出身校に関わらず、就職してからは純粋に働きぶりで評価されます。

偏差値の高い大学出身なら優秀な人材なんだろう、と考えることも出来ますが、「標準偏差」「外れ値」という概念を理解すればそう単純じゃないことは分かりますよね。もちろん逆も然りです。

要するに実際に働いてみてからが勝負です。

 

 

まとめます。

 

  • 少しでも早く臨床検査技師として働き始めたいなら短大や専門学校 (ただしカリキュラムはタイトスケジュール)

 

  • 費用を安く抑えたいなら国公立だが、学力的に難しいなら私立の学費減免制度を活用する

 

  • 手厚いサポートが欲しいなら私立がおすすめ。自主的に頑張れる人で見聞を広げたいなら国公立がおすすめ

 

 

以上です。何かあればご指摘ください。

 

 

追記:

短大や専門学校だと四年制大学より初任給が安い施設が多いと思います。

ただし、働く期間が1年多いと考えるとトータルではあまり変わらないかもしれません。

検査技師の場合は昇給や出世に学歴はほぼ関係ないですからね。